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無農薬・無肥料「自然農法」で育てる。朝来市 和田山町『ありがとう味噌』

お味噌ができるまで

兵庫県のほぼ中央に位置する朝来市和田山町。
「自然農法」で育てた作物を自ら加工し、販売する岡村康平さんを訪ねて。

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a.味噌の原料となる大豆畑。
b.岡村さんは稲麹からの種麹菌の培養にも挑戦している。黒い粒に見えるものが稲麹。
c.かまどの温度調整も作業の重要なポイント。
d.味噌仕込みに使う麹の仕込み風景。
e.完成した「ありがとう味噌」。
f.三男の根(こん)ちゃんは、最近は畑仕事に興味津々。

 

 

「僕が作っているのではなく、太陽と大地と水が作っている。自然の恵みにありがとう、という気持ちを込めて」

味噌に使われる材料である、麹・大豆・塩のうち、塩以外はすべて自家製。どこか懐かしい、優しい味わいは、自然の力を生かして、寄り添う、岡村康平さんの自然体な暮らしが作り出しているのかもしれない。

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生産・製造、一貫して行う味噌作り

古くから交通の要所として栄え、農業のほかに家具生産も盛んな和田山町。この町で、「ありがとんぼ農園」として農業を営んでいるのが岡村康平さん。実家の和室を自力で改装し、自称「日本一小さな味噌加工所」にて1月〜3月の農閑期に味噌仕込みを行っている。

彼が作る「ありがとう味噌」に使われる大豆と米は、無農薬・無肥料で、できるかぎり自然に任せる「自然農法」で育てたもの。

塩は五島列島に住む友人が作る天然塩を使用し、余計なものを一切使用しない。

ほのかに甘い麹の香りと優しい味わいにファンが多く、大阪や兵庫のオーガニック食材店に卸すほか、直接販売をしている。

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現在37歳、妻と4人の息子とともに暮らす岡村さんが味噌作りを開始したのは2006年。まだ自身の農業が軌道に乗っていない頃に一時、酒蔵に勤めたことがきっかけとなった。

「味噌は昔からずっと作ってて。酒蔵で麹の作りかたも学んだし、自分の所でできた大豆とお米で作っている人は少なかったから、本格的にやってみようと思って」。

そうして作った味噌加工所には、大きなかまどが。「薪で火をおこしたかった。炎のエネルギーが味噌に注入されているような…。生き物的な要素に魅力を感じて。火をおこせるのは田舎の特権やしね」。

そんなこだわりとともに作られる味噌は、1シーズンで1t弱。毎日少しずつ仕込み、約7ヶ月後に完成する。

「味噌仕込みは、がんばりすぎたらアカンね。こだわり尽くすと、おもしろみのない味になってしまう」と、あくまで無理はしない。

 

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目指すは大地とともに生きる農業

岡村さんは生まれも育ちも和田山町で、父の仕事は家具屋。農業に触れるようになったのは、大学で農学部に入ってから(ちなみに農学部に入ったのは「そこしか受からなかったから」だそう)。

卒業後に地元へ戻り、自給自足生活をしている中学校時代の友人に会いに行ったことが、彼に衝撃を与えた。「学生時代は地味なイメージだった友人が、髭もじゃで、炭をかついで鹿の角を持って山から下りて来た。その姿を見てすっごい敗北感を覚えたんよね」。

大学で農業を学んできた自分に比べ、自然の中でたくましく生きる姿が、今までの価値観を覆すものだったという。

その後、友人の元で1年ほど自然農法などを勉強。「彼が当たり前のように家を作っていたから、僕も自分の家を作ったり。何でも自分でやってみたくなった」と、現在は、米や大豆、里芋、ジャガイモなどを栽培。

味噌のほか、玄米餅、どぶろく、塩麹など加工食品も製造販売するように。多岐に渡る仕事は大変ではないのか、と問うと「全然。むしろその方が楽で」と答えた。

「大豆は雑草の中でも強く生きる。種を蒔いて草とりも1回するだけだし。収穫して乾燥させて自然にできる、いわば“できちゃった農法”やね(笑)」。

昔は少量多品目を栽培していたが、向いていなかったと話す。「自分の家を作ることに1年間専念するためにも、大量少品目に切り替えて。それから春夏秋は農業を軸に、冬は加工と山の仕事(林業)をするように。

自然の力に任せて、やるべきことをその時するのが僕には一番! 自然に感謝やね!」。

 

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健康な山を作り、田畑に恩恵を

岡村さんは田んぼに水を川のように流し、もみ殻の土で排水を良くして、肥料がなくとも育つ「炭素循環農法」を取り入れている。これは“自然の山と同じ状態の畑を目指すこと”だという。

そこで岡村さんの近頃もっぱらの関心事は、先の言葉にも出てきた林業。「田んぼに水をかけ流すことで土に栄養が流れ込む。

山が荒れると水が悪くなるから」と、一昨年から30・40代の若手13人がチームとなって長年放置された付近の山々約7haを管理するように。「山はゆったり、畑はスピーディに進む。

だからこそ、山からなんとかしないと。間伐が行き届かず光が入らなくなった山も、いつか下草が生える健康な山にしたい」。

今自分が自然に対してできることを考え、行動する岡村さん。今後の活動にも目が離せない。

 

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お味噌ができるまで

 

 

 

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ありがとんぼ農園 TEL/FAX 079-674-0120

出典元:食べる通信

 

食べる通信