Ichiban KOBE fellowsスペシャルインタビュー@メリケンパーク
日本全国、そして世界に誇れる神戸エリアのイチバンを紹介するこのインタビュー。
今回は神戸出身、現在New Yorkでメークアップアーティストとして活躍されているウツボケントさんのスペシャルインタビュー。ファッション業界という感度の高いお仕事をされているケントさんならでは視点で、KobeとNew Yorkの魅力、そして2つの都市の違いなど色々とお伺いしました。
編集長:
お名前とご職業をお聞かせください。
ケントさん:
ウツボケントです。メークアップアーティストです。
編集長:
どちらで活動していらっしゃるんですか?
ケントさん:
ニューヨーク(以下NY)です。
編集長:
ご出身が神戸だとお伺いしました。
ケントさん:
はい、生まれも育ちもずっと神戸です。高校と美容学校は大阪へ通っていました。そして美容学校を卒業してNYへ飛びました。少し(日本へ)帰ってきて東京に住んだ時期もあったり、しっかりビザの準備をしたり。
編集長:
我々はIchiban KOBEという雑誌を編集するにあたり、神戸の知られざるイチバン、いわゆる場所や人、モノにフォーカスしているのですが、神戸出身で世界に羽ばたいている人にも焦点を当てたいと思っています。ルーツが神戸で、そこから世界で活躍する、何かの折に必ずまた自分の出身である「神戸」を感じることがあると思うので、そういったことをお伺いしたいと。この度は貴重な休暇の間にインタビューをご快諾いただきありがとうございます。もう明日にはNYへ帰られるんですよね。
ケントさん:
いえ、まだあと2日あります。明日は家族とゆっくり過ごそうかなぁと。
編集長:
NY生活はもう何年くらいに?
行き来して、トータルで7年くらいです。
編集長:
NYと神戸を比べて、どうですか?
ケントさん:
仕事という面で考えるとNYはとても挑戦できる場所であり、東京とも全然違います。でもちょうど昨日も友達と話していたんですけど、神戸は海外の方がとても多いですよね。(NYで仕事をするにあたり)外国人に対する免疫ができていたというのもあり、神戸に住んでいてよかったと思っています。
編集長:
やはりメイクの世界だと、一番行きたかったのはNYですか?
ケントさん:
今はメイクアップでファッション業界にいるという立ち位置なんですけど、ヘアメイクをやっていたときはロンドンもすごく考えました。すごく個性的な作品があったり、学生の頃ヴィダルサスーンの研修に行ったりもしていたので。それでカットやヘアメイクの方面に進もうとしていたのですが、やはりメイクで勝負したいと考えた時に、最終地点と言われているNYに決めました。今でも世界各地のパリ、ミラノ、ロンドンの人達が雑誌の撮影も広告の撮影も全部NYで撮るんです。NYは仕事が集まる街、そのみんなが最終地点として来る場所で、僕が新しいスタートを切るというのもいいんじゃないかと思って。最初は過酷でしたけど、何とかいい感じで仕事ができるようになってきました。
編集長:
なるほど、いまの仕事のスタイルをお聞かせください。フリーランスで活動されておられるんですか?
ケントさん:
ずっとボスにアシスタントとして付いていたんですが、昨年あたりから独立をしました。もちろんボスが忙しい時に手伝うことはあります。ボスはGUCCIの広告など大掛かりな仕事をしていたりするので、撮影などで人数が足りない時とかにはお手伝いに行きます。僕はフリーランスの仕事をメインでしていて今ではアシスタントが何人かついてくれているので、「チーム・ケント」というスタイルで仕事をしている感じですね。
編集長:
なるほど。いまは具体的にどんなお仕事をされていますか?
ケントさん:
ファッション誌だとVOGUE、NUMERO。あとはブランドの仕事でCalvin Klein、Theoryなど最近やらせてもらえるようになりました。あとはいまちょうどファッションショーを3つやらせてもらっています。
編集長:
じゃあとてもお忙しいですね。
ケントさん:
いやあ、そうでもないです。いい感じにはなってきましたが。笑
編集長:
「チーム・ケント」のメンバーはきっと国際色が豊かなのかなと思っていますが、実際いかがですか?
ケントさん:
そうですね、今インスタグラムにも力を入れていて、特にここ1年でハッシュタグなどもいろんなことを考えてやり始めると、世界中の様々なところから連絡をいただくこともあります。メンバーでいうと、、、一番初めはアメリカ人のアシスタントに付いてもらえました。それからアメリカ育ちの日本人の方や、日本から来た方が自分のチームで助けてくれているという感じになってます。メイク業界は皆がアシスタントで「弟子入り」という感じなんですけど、僕らのチームは皆が一丸となって僕を支えてくれて、どうやって僕を売ろうかと頑張ってくれています。ホントうれしい限りです。
編集長:
それはケントさんの人柄がなせる技ですね!
僕も音楽や芸能の世界、それぞれファッションに絡む仕事をしていましたが、すごい世界ですし、才能があって、光り輝いている人をサポートしている人がどれだけいるかということを目の当たりにしました。
海外生活を経験して、NYへ行ったからこそ感じる、ケントさんの神戸の印象は?
ケントさん:
NYは都会といっても僕にとっては仕事をする街です。神戸に帰るとやはり育った街なので、ほっとする場所であり、家族と過ごした場所だということが強いです。神戸に関しては変わっていくのが早いとも感じます。残る場所はしっかり残ってはいるんですが、街の風景の変化の大きさに少し寂しさを覚えるときもあります。
編集長:
私たちはIchiban KOBEという外国人向けの情報誌を作っているのですが、2020年の東京オリンピックに向けて、そして外国人をもっと受け入れようという政策がある中、実際に神戸来る外国人が本当に増えています。僕も海外にずっと住んでいた経験から、神戸を訪れる外国の方々に日本の良さ、神戸らしさ、が伝えることが出来ればいいなと思っています。ケントさんも神戸に住んでいらっしゃったので、そういう気持ちが強いのでは?
ケントさん:
同感です!本当にそう思います。感覚的なものですが、神戸には東京くらい外国人が多いのではいう印象を受けます。僕の地元の神戸市灘区でも外国人とよくすれ違いますし、神戸はとても海外と近い街、国際的な街だと思います。僕が出来ることは美容業界から盛り上げていくこと。次の世代にメイクの仕事は大変だということもしっかり伝えた上で、美容学校に通うような若い子達には世界に羽ばたいていってほしいです。そしてまた神戸に戻ってきて、ファッション雑誌や芸能に繋がるようなイベントなども増やしてほしいと願っています。実際いまの神戸にはメイクの仕事の面で見るとチャンスが少ないのが現状ですから。
編集長:
確かに神戸にはメディアが圧倒的に少ないし、自分達の新しい企画なども、歴史ある由緒正しき街であるが故に、発信し広げるのが難しい一面も感じています。その点ではNYは、新しいもの、奇抜なもの、いいものであれば受け入れよう、広めようとする姿勢が圧倒的に強いのではと。
ケントさん:
その通りです。NYはあれだけ様々な人種がいる中で、メイクアップ1本で勝負しに行ったなら正直年齢も関係ないし、気にしている人はいないです。目上の人を敬う日本のよさ、日本人らしさはもちろん残してほしいが、日本でももっとそれぞれが独自性を持って自発的に挑戦していけるような環境になっていけばいいと思います。
編集長:
僕も海外生活から戻った時に、日本風のやり方を覚え直すように言われて、多少なりとも戸惑った記憶があります。
ケントさん:
そういった考え方の違いはありますね。アメリカと日本とは全く逆だったり。
編集長:
メディアの仕事を通じて、神戸の良さを海外に向けてしっかりと発信し、海外の面白さを日本全体に広げていけたらと考えています。Ichiban KOBEは、外国語の雑誌を発行しています。そんな中少し寂しい話ですが、海外からお越しの方の事をあまりご存知ないがゆえに、「外国人のお客様が来るとマナーが分からなくてどうしたらいいのかも分からず、、、」とか「もし日本人の常連のお客様に迷惑が掛かったらと思うと外国人の観光客の方を受け入れるのに勇気が必要で、、、」といったお話を街中でお伺いすることが多いんです。とても複雑な心境です。だからこそ神戸の皆様、そして海外から来られる皆様のが共にハッピーになるように状況を変えていきたいと強く思います。
ケントさん、今後の神戸に期待するものは?
ケントさん:
時と共に変わっていくところは嬉しい気持ちもありつつも、変わらないでいてほしいイベントもあります。ルミナリエや花火大会、地元のお祭りなどはなくならずにいてほしいです。新しい神戸を目の当たりにしながら、周りの風景や建物が変わっていくことは仕方がないと受け止めています。自分は寂しく感じても、次の世代の子達は、その目の前にあるのが神戸なので。神戸の「人」については、神戸からもっと海外や東京に出て行く人が増えていけば自然と変わっていくものがあると思います。その人達がまた神戸に戻ってきて、さらに魅力的に変えてくれるような。神戸は住みやすい街なのでずっと神戸を離れない人もいらっしゃいますよね。それもすごく大切なことだし、そういう人達がいるからこそ今の神戸があるんだと思います。
編集長:
NYで神戸出身の方には出会いましたか?
ケントさん:
実は神戸育ちの韓国人の子と撮影で出会い、意気投合しました。ヘアメイクをしている子で、お互いをすごく分かり合っているので、もう4年ほど仕事の仲間、パートナーとしてやっています。いまはもう何があっても一緒に、僕がメイクをするときは必ずその子にヘアを任せたいので。メイクの仕事で毎回同じヘア担当をつけてもらえることはこの業界ではとても特殊なことだし、最初はお互い力がありませんでしたが、ずっと二人で頑張ってきたことをNYで認めてもらえるようになりました。僕のメイク、またはその子のヘアに仕事依頼がある際には必ず両方に声がかかるようになったんです!
編集長:
すごいですね!!
ケントさん:
NYで神戸出身のその人に出会えたことが、僕にとって正直一番大きなことでした。
編集長:
神戸というキーワードで繋がったんですね。
ケントさん:
はい、やはり神戸育ちの人は繋がっていくのが感覚的にあります。どれだけ同い年で意気投合したとしても、同じこの地域で育ってきたということって、単に「神戸だから仲良くなったね」だけじゃなく「神戸の人だから分かる気持ちの変化」とか、分かり合えるんだと思います。
編集長:
身体に流れているルーツというのを感じ合えるんでしょうね。
NYで日本の神戸出身と言えば、神戸のことはご存知なのでしょうか?神戸という街の知名度を知りたいです。
ケントさん:
神戸ビーフがとても有名なので、分かってもらえることが多いです。
編集長:
逆に、神戸ビーフ意外これといった物がないのもよく指摘されます。他に神戸にしかないコレ!というご当地的なものがないので、発信していけるものを作っていきたい気持ちがあります。
ケントさん:
ファッションの仕事もそうですけど、発信していくものは、流れていくものだと考えています。いま僕が抱えている仕事もどんどん若い世代に譲っていったり、他の地域に流して広げていったりすることが大切で、その広がりが発信となってきますよね。
編集長:
神戸のファッションシーンはどう思いますか?
ケントさん:
神戸っぽいファッションをしている一般の方を見るのはとても楽しみです。その街ならではのサイズ感とか、着方とか、街によって個性があるのが面白いですね。ファッションシーンとして捉えると、もっと面白いことが出来るんじゃないかと思います。もっと柔軟に考え、若い人たちも含めみんなで一緒に考えて、いろんな機会を次世代に譲っていけば新しいものが生まれるんじゃないかと。
編集長:
ムーブメントを作っていくにはチャレンジや熱意が必要なんですよね。
ケントさん:
ファッション業界でいうと、個人的な見解かもしれないですが、日本はアメリカと比べ閉鎖的な感じがします。雑誌でも中国のVOGUEは中国のセレブを表紙に起用しますが、日本ではほとんど海外版の表紙のままで、日本人が表紙を飾ることはほとんどないと思います。同じアジアでも中国は自分達の国を押し出していく気持ちが強いですよね。日本で企画する雑誌やイベントも、もっと面白くできるし、もっと大胆にいろんな人を呼んで、いろんなことしてみたもいいんじゃないかなと思います。大胆さって大切なんですよね。
編集長:
それすごく思います!ハッとするような企画が欲しいです。SNSで目にしたんですが、トム・ハンクスさんが東京の居酒屋で日本の一般のサラリーマンと遭遇し仲良く飲んでるような面白さ、大好きです。とてもインターナショナルな感覚で、粋な感じ。
ケントさん:
神戸にこの店が欲しい、こんな芸能人・有名人を呼んでほしい、といった街の意見を集約できるようなコーナーがあるといいですね。ネット上でもいいし。
編集長:
面白そうですね。それ、やりましょう!Ichiban KOBEの紙面でも外国人に「キョウイチ」(今日の一番)を聞いています。同じように神戸に住む人、訪れる人に街中で「神戸に欲しいもの」を聞いて回って、声を集められると思います。
今後についてはいかがですか?将来的に神戸に戻ってくるお考えもありますか?
ケントさん:
メイクアップについて言うと、正直神戸のマーケットは非常に小さいんです。
編集長:
商圏がないんですね。
ケントさん:
はい、マーケットがないということは、同時に大切な親元にいられない寂しさもあります。だからこそ、いまNYでメイクとしていける所までいって、最終的に事務所を立ち上げて、いつか親の近くで住めるようになれるといいなという気持ちは持っています。もちろん日本でトップの仕事をと考えるなら東京で、というのが当たり前ですけど、自分のNYでの経験を活かし、帰国したら関西をベースにしてどんどん美容業界を盛り上げたいです。関西には流れを作る力があると思うので。そこで事務所を立ち上げることで、流れがもっと強いものになればいいなと。
編集長:
今回はご縁があり、インタビューをさせていただきました。ケントさんの話をもらって、絶対にお会いしたいと思っていましたし、実際にお会いすると刺激のあるお話ばかりで、パワーをいただきました。
神戸で頑張った人がNYでさらに飛躍して架け橋になる。そんなケントさんが話すことによって、よりリアルな状況を伝えられることが今の若い世代に伝わるものだと思います。
ケントさん:
いろいろな縁で繋がっても、友達や知り合いと一緒に仕事することは難しいと思うんです、オフィシャルな仕事という形になると、どうしてもいろんなマネージメント上の規制があったりして。でも「一緒に何か大胆なことやろう」っていう企画だったら簡単にできると思うし、みんなが力を合わせて出来ることを集めていけば、大きなことが成し遂げられると信じています。
編集長:
ムーブメントを起こすようなイベントをぜひ一緒にやってみたいですね!周りの外国人の友達もたくさん巻き込んで。
ケントさん:
僕はよく周りの人を「巻き込みがち」って言われます。笑
編集長:
いつかぜひ一緒に何かやりましょう。NYもしばらくいってないなぁ…笑
ケントさん:
僕に出来ることがあれば何でも。いつでも連絡してください!一緒に企画を練るなら部屋ひとつ空いているので、NYでお待ちしてます!
【Kento Utsubo’s works】
Vogue China (2014)
Bullett Magazine (2015)
Elle Malaysia (2015)
Harper’s Bazaar Thailand Men (2015, 2014)
HEROINE Magazine (2017, 2015)
i-D Magazine (2017)
INPRINT Magazine (2016)
Interview Russia (2016)
Iris Covet Book (2017, 2016)
King Kong Magazine (2017, 2016)
L’Officiel Indonesia (2017, 2016)
L’Officiel Malaysia (2017)
Marie Claire Indonesia (2016)
Numero Homme Berlin (2016)
Numero Russia (2017, 2015)
Nylon Singapore (2016)
Vogue Espana (2016)
W Magazine online (2017, 2016)
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